提供: 有限会社 工房 知の匠
文責: 技術顧問 大場 充
更新: 2025年7月16日
カントの観念論哲学の問題点を解決するために、18世紀末にドイツに生まれたカントと同時代の哲学者、ヘーゲルは、古代ギリシャの人々が使っていた「弁証法」を使って、ブラトン的な理想論と、アリストテレス的な現実論の調和をとることを提唱しました。弁証法は、古代ギリシャの人々が、よく使っていた、2つの対立する意見の中間をとって、妥協案を見出す方法です。
19世紀に、ドイツで活躍した哲学者、カントの観念論哲学の問題点を解決するために、18世紀末の同時代のドイツに生まれたヘーゲルは、古代ギリシャの人々が使っていた「弁証法」を使って、ブラトン的な理想論と、アリストテレス的な現実論の調和をとることを提唱しました。弁証法は、古代ギリシャの人々が、2つの対立する意見の中間をとって、妥協案を見出す方法として、利用していた方法です。
今、ある人が最も正しいと考える案を、細かく吟味すると、a0案とa1案の2つの案を合成して構成されたものであるとします。そして、その正しいと思われる案とは正反対の案が、a0案と、a1案とは違うa2案の2つの案から構成されているとします。このとき、弁証法では、この2つの案、AとA’とを比較して、a1とa2との中間、またはa1やa2よりも望ましい、b案をつくり、そのb案と、AとA‘に共通するa0案を合成して、新しいB案を作れば、B案は、もとのA案よりも望ましい案になっているはずです。これが、弁証法の基礎です。
この弁証法を、繰り返し適用することによって、より正しい案、正しい説明が分からない場合でも、それまでよりは正しそうな案、正しそうな説明を見出すことができるはずです。ヘーゲルは、そのようにして、不完全な知識しか持っていない人間にも、より「完全に近い知識」に近づくことができると考え、主張しました。このことは、古代ギリシャから、ずっと続いていた、プラトンの思想と、アリストテレスの思想の、2つの哲学的な論争に終止符を打つことができそうな、理想論と現実論を調和させる方法が、見出されたと言うことができます。
それは、イギリス哲学の現実を重視した経験主義と、ドイツ哲学の理想を追求しようとする超認識主義の、2つの相対立する思想を調和させ、人間の知識をより高い水準に導こうとする考えだったと言えるでしょう。それは、人間が納得し易く、現実にもよく適合する理論の構築を期待させます。