提供: 有限会社 工房 知の匠
文責: 技術顧問 大場 充
更新: 2025年8月17日
イスラエルの歴史家ユバル・ハラリ氏は、その著書「サピエンス全史」において、人類の発展過程を分析し、特に近年のコンピュータの発展に注目して、「人類が、19世紀までのキリスト教世界における「神」に似た存在になりつつある」ことを指摘しました。その新しい人類に、ハラリ氏は、それまでの「ホモ・サピエンス(新人類)」とは異なる、「創造主」の意味を込めた「ホモ・デウス」と言う名をつけました。ホモ・デウスとは、神と同じように、人間と同じように「考える機械」を創造した、新しい「創造主(神)」です。
約30万年位前、アフリカで現生人類である「ホモ・サピエンス」が誕生しました。その頃、すでに「ネアンデルタール人」と呼ばれる現生人類の祖先になる人々は、アフリカ大陸を出て、地中海沿岸地域からヨーロッパ大陸へと進出し始めていました。約7万年前に、現在のインドネシアにあるトバ火山が大爆発を起こし、地球全体が寒冷化しました。それは、ホモ・サピエンスにとって絶滅の危機をもたらしました。ホモ・サピエンスの全人口は1万人程度にまで、減少したと、計算されています。その後、ホモ・サピエンスもアフリカ大陸を離れ、世界各地へと移住し始めました。そして、ヨーロッパ大陸では、先にヨーロッパ大陸に着いていたネアンデルタール人と、ホモ・サピエンスが共存する時代が進みました。しかし、約3万年前、ネアンデルタール人は、人口が急減し、現在のスペインの西端の地で、絶滅しました。
ネアンデルタール人が「なぜ絶滅したのか」は分かっていません。今、最も有力視されている説は、以下の通りです。(1)ネアンデルタール人が形成した社会は、血縁を基本とした規模の小さな社会でした。(2)小規模な集団は、食べ物を集めるためには有利ですが、人口を増やすには、不利です。(3)集団の規模が小さいと、相互の意思疎通のための言語を発達させる必要性は薄れます。(4)言語の発達が遅い社会では、生活のための道具の進歩も遅くなります。(5)道具の進歩の速さに差のある2つの集団では、進歩に遅れのある集団の方が人口の増加が遅くなります。このような原因が重なり合い、ネアンデルタール人の集団は、ホモ・サピエンスとの競争に負け、絶滅したと考えられます。しかし、その過程で、ネアンデルタール人とホモ・サピエンスとの間で「交雑」が起こり、現代のホモ・サピエンスの子孫には、ネアンデルタール人の遺伝子も引き継がれています。現日本人にも、2パーセントから3パーセントの割合で、ネアンデルタール人の遺伝が引き継がれています
それらの基礎の上に、最後に、その理論的な理解に基づき、AI技術と社会の関係、特に、「人間のような機械」について考察します。